緑樹。青空。月夜に流れる白い雲。窓ガラスから溶け込んでくる自然の色は、最上級のインテリアだと思う。
「リアルキッチン&インテリア」にアムスタイルの事例が紹介されている。写真と文章が重なり合って生まれるリズミカルな感性は、単なる事例写真では表現しきれない奥行きがある。
年に一冊の刊行だから、著者の視点や、本としての佇まいの変化を見つけることを楽しみにしている。あらためて眺めてみると、今回は全体的に見出しやタイトルのニュアンスが変わった気がする。
華やかな言葉が少ない。
著者本人に聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
「最大公約数的な安心感に流れる怖さを断ち切りたかったんです。やっぱり、自分の言葉を探さないといけないなって思って」
住宅雑誌の原稿は「人生の幸せ」や「暮らしの豊かさ」といった結論に落ち着きがちだ。きれいに収まるし誰からも反感を買わない。
でも取材を通じて彼女はいつも思うそうだ。こんな素晴らしい家に住んでいる人にだって人生の苦味や悲しみがある。だからそんな方たちの人生や住まいを描く時に、紋切り型の言葉を使いたくないと。
「窓の緑に心はほどける」
今回つけられたこの一言は、状況を何も定義していない。
忙しさを抱えてこの別荘に戻ってきたのか。楽しいことを準備して「さあ着いたぞ」と胸を躍らせているのか。苦しみや悲しみと静かに向き合うために、そこにいるのか。
心は読めない。でもこの家がその人にとって最高の場所であることだけはわかる。それを「緑に心はほどける」という言葉に託したのだという。
「心のなかを描くのに、華やかな言葉はいらないのかもしれないね」
僕は彼女にそう伝えた。